意見聴取の制度を活用する
1. 公安委員会は、免許を取り消し、又は免許の効力を90日以上停止しようとするとき(略)は、公開による意見の聴取を行わなければならない。この場合において、公安委員会は、意見の聴取の期日の1週間前までに、当該処分にかかる者に対し、処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所を通知し、かつ、意見の聴取の期日及び場所を公示しなければならない。
2. 意見の聴取に際しては、当該処分にかかる者又はその代理人は、当該事案について意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することができる。
3. 意見の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、公安委員会は、道路交通法に関する事項に関し専門的知識を有する参考人又は当該事案の関係人の出頭を求め、これらの者からその意見又は事情を聴くことができる。
公安委員会は、意見聴取期日の1週間前までに、「処分の理由」「意見聴取の期日」「意見聴取の場所」を書いた通知書を送ってきます(はっきり言って1週間では準備ができない!)。意見の聴取は公開の場で行われます。誰でも傍聴でき、ドライバーは有利な証拠の提出もできます。例えば、同乗者を連れて行くとか、事故の被害者など関係者の調べを求めることも考えられます。意見聴取は裁判手続きのようなものですから、補佐人を付けることもできます。
しかし、意見聴取の実情を見ると、この制度は本来予定した形で運用されているとは言えません。公安委員会や警察が制度広報をきちんとしないため、多くのドライバーは意見聴取の機会があることを知りません(少なくともよくは知らない)。ドライバーが本気になって弁明したり、たくさんの証拠調べを請求したりすれば、公安委員会の事務量は大変なものになります。それはできるだけ避けたいし、交通取締りのあり方などに対する批判や要求の世論が盛り上がるきっかけにもしたくない。警察はそういう考えから広報・宣伝に力を入れないようにしていると見る人が少なくありません。
現在の運用状況を見る限り、その批判はかなり当たっているように思われます。意見聴取と言っても、2時間ぐらいの間に20~30人ものドライバーを調べてしまうのです。丁寧に一人ひとりの言い分を聞く時間はありません。「38キロオーバーですね。どうしてこんなスピードを出したのですか。前歴もあるし、もっと気をつけなければいけなかったでしょう」などと言われ、「すみません。これからは気をつけます」などと答えて、だいたいこの程度で終わりです。また、補佐人を同行するドライバーは極めて少数です。1回の意見聴取会場に1人いるかどうかというところでしょうか。
道交法の目的は「道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ること」などにあります(道交法1条)。とすれば、公安委員会の処分の基準はその「危険防止」や「交通安全」をどの程度守らなかったかとか、安全を危うくしたかという観点から見なければいけないはずです。また、処罰の妥当性についてもその視点に立って考えなければならないはずです。道交法103条は「違反があったら必ず処分する」とは言わず、処分することが「できる」と規定しています。つまり、事情によっては処分しなくてもよいということ。処分は実情を踏まえて行えという考え方がここに込められています。
点数が一定の基準に達したら例外なく一定の処分になるように思われている点数制度ですが、基準はあくまで基準で、実際の結論は具体的な事情に見合ったものにするのが正しい「道交法思想」です。
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