交通事故時の補償解決実績、および著書、講演実績多数 交通事故の弁護士と言えば高山法律事務所

行政処分の基本的なしくみを理解する

交通事故の弁護士と言えば高山法律事務所 TOPページ > 交通行政処分 > 行政処分の基本的なしくみを理解する

行政処分の基本的なしくみを理解する

 行政処分は点数制度の上に成り立っています。点数制度は、ドライバーの過去3年間の違反や事故の内容に予め一定の点数をつけ、その合計点数(累積点数)によって免許の効力を一定期間停止したり(以下、これを「免許の停止」「停止」などという)、取り消したり(以下、これを「免許の取り消し」「取り消し」などという)する制度です。日本では、欧米の類似の制度にならって1969年から実施されています。「私の持ち点は何点だ」などと言う人がいますが、「持ち点」という捉え方は行政処分の世界に登場しません。不正確なカウントになっている場合が多いように思います。

 このほど道路交通法施行令が改正され(2009年6月1日施行)、新しい違反区分が設けられました。運転殺人傷害等・危険運転致死傷等・酒酔い運転・麻薬等運転・救護義務違反を「特定違反行為」といいます。特定違反行為の基礎点数は表1のとおりです。そして、これら以外の違反行為を「一般違反行為」といい(従前の違反行為から「酒酔い運転等」を除いたものになる)、また、救護義務違反の点数が「付加点数」から「基礎点数」に変わりました(これまでは、違反が成立しなければ救護義務違反の点数は付加されなかったが、今回の改正で、違反が成立しようがしまいが基礎点数として救護義務違反の35点が付くことになった)。

 以上を整理すれば、点数制度の内容は、①一般違反行為の点数、②特定違反行為の点数、③交通事故を起こした場合の付加点数、④当て逃げの場合の付加点数、からなることになります。

表1(特定違反行為に付する点数)

特定違反行為 基礎点数
運転殺人等 62点
運転傷害等 45点~55点
危険運転致死 62点
危険運転致傷 45点~55点
酒酔い運転・麻薬等運転 35点
救護義務違反 35点

 点数制度によらない処分があります。①重大違反唆し(そそのかし)等を理由とするもの、②道路外致死傷を理由とするもの、③危険性帯有を理由とするものです。
「重大違反唆し等」とは、重大な違反をけしかけたり、やろうとするのを手助けしたりした場合を言い、免許を取り消すか停止するかします(免許を与える前なら免許を与えることを拒んだり保留にしたりする)。「重大違反」とは、酒気帯び速度超過、酒気帯び運転、速度超過など点数が6点以上のものです(ところで、「唆し」をちゃんと読める人は少ないでしょうね!)。
話を戻します。そそのかしたり助けたりする者の危険性は、実際に違反におよぶ運転者と変わらないと見て、独立の処分理由にしたのです。処分の基準は自らその重大違反をした場合に準じます。

 「道路外致死傷」とは、道路以外の場所で車両を運転して人を死傷させることです。道路で事故を起こして人を死傷させるのと危険性は同じだと考えた処分です。処分の基準は、道路で交通事故を起こした場合に準じます。
「危険性帯有」とは、車の運転が著しく道路交通の危険を生じさせるおそれがある状態を言います。車の使用者が一定の違法運転を下命・容認したときとか、暴走行為をさせたときとか、麻薬・覚せい剤等を使用したときに、危険性帯有者と判断されると6か月以下の免許停止処分がされることがあります。

違反行為とその点数を知る

 点数が付けられる違反行為は、下記の「表2 違反行為に付する点数」に掲げられているものに限られます。
典型的なのは、速度超過(1~12点)、携帯電話使用等(1~2点)、指定場所一時不停止等(2点)、通行禁止違反(2点)、信号無視(2点)など。この5つで罰則を伴う道交法違反事件による取り締まり総数の4分の3前後になります。このほか、罰則なしの違反で検挙件数の非常に多いものにシートベルト装着義務違反(1点)があります。なお、以前は大量にあった駐(停)車禁止場所等違反が激減しました。最近は放置違反金納付命令事件として処分されるようになっています(罰則も点数もない)。
また、免許証記載事項変更届出違反(道交法94条Ⅰ)、免許証返納義務違反(107条Ⅰ,Ⅲ)、泥はね運転(71条Ⅰ)、免許証不携帯(95条Ⅰ)など、点数が付かない道交法違反もあります。

(表2 一般違反行為に付する点数)

違反の種類
点数
酒気帯び時の点数
違反の種類
点数
酒気帯び時の点数
0.25
以上
*1
0.25
未満
*2
0.25
以上
0.25
未満
共同危険行為等禁止違反
25
高速自動車国道等措置命令違反
2
25
14
無免許運転
19
25
23
本線車道横断等禁止違反
2
25
14
大型自動車等無資格運転
12
25
19
高速自動車国道等運転手遵守事項違反
2
25
14
仮免許運転違反
12
25
19
免許条件違反
2
25
14
酒気帯び運転 0.25以上
25
番号標表示義務違反
2
25
14
   0.25未満
13
混雑緩和措置命令違反
1
25
14
過労運転等
25
通行許可条例違反
1
25
14
無車検運行等
6
25
16
通行帯違反
1
25
14
無保険運行
6
25
16
路線バス等優先通行帯違反
1
25
14
速度超過  50km以上
12
25
19
軌道敷内違反
1
25
14
30(高速40)km以上50km未満
6
25
16
道路外出右左折方法違反
1
25
14
25km以上30(高速40)km未満
3
25
15
道路外出右左折合図車妨害
1
25
14
20km以上25km未満
2
25
14
指定横断等禁止違反
1
25
14
20km未満
1
25
14
車間距離不保持
1
25
14
積載物重量制限超過 大型等10割以上
6
25
16
進路変更禁止違反
1
25
14
大型等5割以上10割未満
3
25
15
追い付かれた車両の義務違反
1
25
14
普通等10割以上
3
25
15
乗合自動車発進妨害
1
25
14
大型等5割未満
2
25
14
割込み等
1
25
14
普通等5割以上10割未満
2
25
14
交差点右左折方法違反
1
25
14
普通等5割未満
1
25
14
交差点右左折等合図車妨害
1
25
14
放置駐車違反 駐停車禁止場所等
3
指定通行区分違反
1
25
14
駐車禁止場所等
2
交差点優先車妨害
1
25
14
保管場所法違反 道路使用
3
緊急車妨害等
1
25
14
長時間駐車
2
交差点等進入禁止違反
1
25
14
警察官現場指示違反
2
25
14
無灯火
1
25
14
警察官通行禁止制限違反
2
25
14
減光等義務違反
1
25
14
信号無視 赤色等
2
25
14
合図不履行
1
25
14
点滅
2
25
14
合図制限違反
1
25
14
通行禁止違反
2
25
14
警音器吹鳴義務違反
1
25
14
歩行者用道路徐行違反
2
25
14
乗車積載方法違反
1
25
14
通行区分違反
2
25
14
定員外乗車
1
25
14
歩行者側方安全間隔不保持等
2
25
14
積載物大きさ制限超過
1
25
14
急ブレーキ禁止違反
2
25
14
積載方法制限超過
1
25
14
法定横断等禁止違反
2
25
14
制限外許可条件違反
1
25
14
追越し違反
2
25
14
牽引違反
1
25
14
路面電車後方不停止
2
25
14
原付牽引違反
1
25
14
踏切不停止等
2
25
14
転落等防止措置義務違反
1
25
14
しゃ断踏切立ち入り
2
25
14
転落積載物等危険防止措置義務違反
1
25
14
優先道路通行者妨害等
2
25
14
安全不確認ドア開放等
1
25
14
交差点安全進行義務違反
2
25
14
停止措置義務違反
1
25
14
横断歩行者等妨害等
2
25
14
初心運転者等保護義務違反
1
25
14
徐行場所違反
2
25
14
座席ベルト装着義務違反
1
25
14
指定場所一時不停止等
2
25
14
幼児用補助装置使用義務違反
1
25
14
駐停車違反 駐停車禁止場所等
2
25
14
乗車用ヘルメット着用義務違反
1
25
14
駐車禁止場所等
1
25
14
大型自動二輪車等乗車方法違反
2
25
14
整備不良 制動装置等
2
25
14
初心運転者標識表示義務違反
1
25
14
尾灯等
1
25
14
最低速度違反
1
25
14
安全運転義務違反
2
25
14
本線車道通行車妨害
1
25
14
幼児等通行妨害
2
25
14
本線車道緊急車妨害
1
25
14
安全地帯徐行違反
2
25
14
本線車道出入方法違反
1
25
14
騒音運転等
2
25
14
牽引自動車本線車道通行帯違反
1
25
14
携帯電話使用等(交通の危険)
2
25
14
故障車両表示義務違反
1
25
14
携帯電話使用等(保持)
1
25
14
仮免許練習標識表示義務違反
1
25
14
消音器不備
2
25
14

*1 呼気中のアルコール濃度 0.25mg/l以上
*2 呼気中のアルコール濃度 0.25mg/l未満

法律相談・お問合せ

▲ページ上部に戻る