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聴取と処分結果の発表はどのように行われるのか

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聴取と処分結果の発表はどのように行われるのか

 あなたの意見を聴取する会場は、小学校の教室の半分ぐらいの大きさのところが多いでしょう。正面に公安委員の席があり、横に処分を求める警察官の席があります(刑事裁判の法廷で言えば検察官席にあたる)。意見を述べるドライバー(公安委員会は「被処分者」と言うが、必ず処分されるような言い方は気に入らない)の席は公安委員に向かい合う位置に用意されています。補佐人が就くときは、被処分者の横が補佐人席になります。

 そして、後ろには自分の順番を待つドライバーの待機席が傍聴席風に設けられています(道交法104条1項は、「意見の聴取の公開」を義務づけている)。裁判所の法廷は裁判官席(法壇)が一段高く作られていますが、意見聴取の会場は高い法壇こそないものの、法廷を連想させます(少年審判や家事審判の審判廷に似ている)。もっともこれはあくまで一般的な話。ドアがあけてあるので様子が外から一応わかるという「名ばかり公開」の会場もあるようです。

 警察官がドライバーの処分理由になる違反事実を朗読し、ドライバーは、それを認めるのかどうか聞かれます。「処分理由の違反」とは今回の違反事実を指します。この点について、実務担当者向けのテキストには次のように書かれています。
「過去3年以内のすべての違反行為に点数を付し、現にした違反行為に付されている点数との合計点数によって処分をすることとされているので、あたかも過去の違反行為も処分の理由となっているような感を受けるが、理論的には、処分の理由となる違反行為はあくまでも現にした違反行為であり、過去の違反行為は、現にした違反行為を理由とする処分を行う場合の危険性推認のための資料として、点数的に評価されているものである」(『点数制度の実務 五訂版』啓正社刊)

 という訳で、過去のケースについてはこちらから、「危険性推認の材料にされては困る」と言わなければ、特に踏み込んで検討されません。過去のものについても違反を争うとか事情を言いたいと言えば、公安委員会は無視できなくなります。かくかくしかじかの事情を今回の処分に当たって斟酌してほしいというものになるでしょう。大事な主張です。

 意見聴取に先立ってあなたが提出した陳述書や証拠類は、公安委員が目を通しています。あなたは、自身の主張をあらためて朗読するのではなく(それほど時間はない)、主張のポイントを拾う形で補足しなければいけません。「私が一番言いたいのはこのことです」というような感じです。聴取時間は1人につき3分から5分くらい。あなたが説得力のある意見を展開すれば、もう少し聞いてくれるかも知れません。関係者にその場で説明してもらうこともあります。

 多くのケースでは、刑事事件(警察・検察の捜査)の方はもう起訴されたのかとか、現在どのような段階にあるのかなどと聞かれます。「起訴」は検察官が裁判所に提訴することです(検察限りで終結するのを「不起訴」という。不起訴にも犯罪の成立自体を疑う場合と犯罪の成立は認めるが起訴はしない場合とがある)。公安委員は刑事事件の処理結果を気にしているのです。あなたが、刑事事件として係争中だと言うと、それなら起訴・不起訴の結果を聞いて公安委員会の結論を出そうと言ってくれる公安委員もいますが、多くは「検察は検察、公安委員会は公安委員会」と言うでしょう(だったら、検察はどうなっているなんて聞くなよと言いたくなる)。

 検察庁も公安委員会も同じ交通違反や自動車運転過失致死傷の容疑に対処する公の機関です。まるきり無関係と言うのはどうかと思いますが、確かに検察庁と公安委員会は、上下の関係や連携する関係にはない独立の機関です。検察官が不起訴にすると公安委員会も処分しない例が以前あったこともあり、現場で紛糾するケースが少なくありませんでした。ともあれ、公安委員会は検察とは別の役所と腹をくくり、言いたいことはここで全展開しましょう。

 弁護士を補佐人に付けて臨むと、あなたの意見聴取の順序が後に回される場合が多いと思います(20~30人の話を後ろでずっと聞いているのは勉強にはなりますが、楽ではありません)。その日意見を聴かれるドライバーは、みんな待機席(傍聴席)で順番を待っています。あなたの補佐人の主張を聞いているうちに、そういうことも言えるのかと気づき、それぞれが自分の言いたいことを言い始める可能性(危険性?)があります。話が面倒になるのを避けたい公安委員会は、弁護士を付けたあなたの聴取順序を後に回すのだろうと推測されています。

 処分の結果は、その日の意見聴取が全部終わった後にまとめて発表されます。午前中に聴取を終え、お昼ごろに結果を発表する公安委員会が多いでしょう。そのため、ドライバーはいずれにしても昼過ぎの発表まで会場の近辺から離れられません。

短期停止処分への意見表明や点数自体の抹消は

 30日と60日の停止処分には、先にお話ししたように意見聴取の制度がなく、公安委員会は、ドライバーの言い分を聞かないで処分できることになっています。しかし、短期であっても行政処分に変わりはありません。言い分があれば積極的に主張しましょう。

 30日と60日の停止処分には「処分の猶予」の制度があると説明しました。そこで詳しくお話ししたように、処分の猶予を獲得するにはよほどの事情を言わねばなりません。多くの準備が必要です。公安委員会から呼び出しがあったら、やはり主張したい事情を書いた書面を作り、事前に公安委員会に送ります。公安委員会には、意見聴取の態勢がもともとないだけに、事前の書面送付が特に重要になります。あなたの言い分に理由があれば、公安委員会はやはり耳を傾けます。

 納得がいかない点数が付いたのでその点数を消してほしいのだが、というお尋ねをときどき受けます。処分の対象になる前に点数そのものを抹消できないかという質問です。当局は「できない」と答弁しています。「一つひとつの点数付けは公安委員会のいわば内部的評価であって処分ではない。点数が付いてもドライバーには具体的な不利益はない」というのがその理由です。

 形式的に言えばそのとおりですが、やはり不合理があります。現実には個々の点数評価の段階で、不利益があるからです。例えば、個人タクシーの資格取得には、交通違反の点数が付いていないこと(違反歴がないこと)が求められます。点数は公安委員会の内部評価に過ぎないなどと言っても通りません。私自身、法人タクシーの運転手から相談を受け、何とか点数を抹消させたことがありますが、たいへん苦労しました。

 だいたい、「不利益は処分のときだ」と言うのなら、処分に伴う意見聴取の際に、過去の全違反の一つひとつについて意見を聴取すべきです。過去のケースを対象にしないというのは、どう考えてもヘンです。個々のケースを問題にすると検討は処分の時だと言い、さて処分の段階になったら過去のケースは問題にしないと言われたのでは、いくら何でもそれはないでしょうと言いたくなります(過去の違反は浮かばれない)。

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