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第1-6 弁護士費用と依頼の得失~

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6 弁護士費用と依頼の得失

弁護士費用の内訳

日本弁護士連合会は、弁護士に頼むときに払う費用を、「弁護士報酬」と称していますが、ここでは裁判所の言葉遣いに従い「弁護士費用」と表現します。弁護士費用の算出法は以前は弁護士会が標準金額を定めていましたが、2004年から個々の弁護士が「自分の標準金額」を決め、標準金額表を事務所内に備え置くことになりました。弁護士によって多少の違いがあると思いますが、以前の弁護士会基準を自分の基準にしている弁護士が多いようですので、とりあえずその基準で説明します。

弁護士費用は「着手金」「報酬金」などに分けられ、ほかにご依頼者が負担される出費に「実費」があります。

着手金は、弁護士がその事件の代理人になった時にご依頼者からいただくお金で、証拠収集や調査のほか依頼された仕事を進めることに対する報酬の一部ということになります。事件処理の結果の成功、不成功の如何にかかわらずいただき、結論が好ましくない場合にもお返ししないお金です。事情によっては分割支払いにするとか、後日自賠責賠償金を受け取った段階で支払うとか、まれには報酬金と一緒にいただく場合もあります。

報酬金は、ご依頼の目的を達した時(多くは補償金の獲得時)に、その成果に応じて頂戴するものです。報酬は、成果が大きければ多くなり、成果が小さければ少なくなります。

実費は、交通費、送料、文書取り寄せ費用などのほか、提訴時の印紙代などもこれに該当します。日当を含めることもあります。弁護士によっては、その都度お支払いいただくとか、実費も報酬中に含めてしまうとか、いろいろのスタイルがあるようですが、とりあえずまとめてお預かりしてそこから必要に応じて使い、不足すれば補充をお願いし、最後に残ればお返しするというのが一般的だと思われます。


弁護士費用の決め方

着手金と報酬金の具体的な金額の決め方に進みます。着手金は、対象の経済的利益の価額、具体的に言えば補償請求額に一定の料率を掛けて算定します。その料率は、請求金額が多いと下がり、請求金額が少ないと上がります。弁護士の労力は請求額が多くても少なくてもあまり変わらないので、いただき過ぎになったり、不足したりしないよう実質的に調整するのです。

着手金は、「経済的利益が300万円以下なら8パーセント、3000万円以下なら5パーセント+9万円が標準。ただし、事案の内容により標準金額に±30パーセントの増減ができる」というのが、弁護士会の規定でした。今でもこの基準に拠っている弁護士が多いと思いますが、多少のバリエーションはあるでしょう。

報酬金は、事件処理で確保した経済的利益の価額、具体的に言えば獲得した補償金額に一定の料率を掛けて算定します。以前は「経済的利益が300万円以下なら16パーセント、3000万円以下なら10パーセント+18万円。ただし、事案の内容により±30パーセントの増減可」という基準でした。
実費は、実際に支出する費用で、その金額は文字どおりケースバイケースです。数万円から10数万円あたりになる場合が多いでしょう。裁判を起こすときには請求額に応じた印紙代が必要になります(1000万円の請求なら印紙代は5万円です)。また、鑑定を依頼することになれば鑑定料もかかります。一般に、提訴するケースでは、交渉で終わる場合にくらべて実費が増えることになります。


事件処理と弁護士費用のイメージ

具体的に数字を算定してみましょう。「200万円の支払い」という保険会社の回答に納得しない被害者が弁護士に依頼するケースを想定します。

弁護士は検討の末、補償額は1000万円が妥当だと判断し、そのように主張しました。数ヶ月間の交渉で保険会社は300万円までしか譲歩せず、交渉は決裂。被害者と弁護士は相談の上、1000万円に弁護士費用80万円を上乗せした1080万円の補償金を請求する訴訟を起こします。

裁判が始まり、双方が主張を闘わせ、刑事事件の記録や医療記録などが取り寄せられ、法廷に提出されました。1年間ほどの訴訟期間が経過し、事件に関する当事者の主張も立証活動もひととおりし尽くしたところで、裁判所から和解案が提示されました。「加害者(保険会社)は被害者に700万円を支払ってはどうか」という内容です。

裁判所の和解勧告は、「これに従わないと、裁判所はだいたいこの水準の判決を出しますよ」というメッセージを含んでいます。被害者と加害者(保険会社)は、裁判所の和解案を受け入れると答え、ここで和解が成立しました。その1ヶ月後に保険会社から弁護士の銀行口座に700万円が振り込まれて、事件は終結です。

さて、弁護士費用です。先の基準に当てはめますと、着手金は1000万円の5パーセント+9万円で59万円、報酬金は700万円の10パーセント+18万円で88万円、実費は訴状の印紙代5万円のほかに諸支出が合計10万円かかって全部で15万円、これらの総計が162万円です。

その結果、被害者の手取りは700万円-162万円の538万円でした。弁護士費用や諸支出を支払っても当初の保険会社回答の200万円より338万円多く、弁護士交渉時の保険会社回答300万円からも238万円多くなりました。なお、弁護士費用(着手金+報酬金の合計額)147万円は獲得金額700万円の21パーセントです。

私の場合は

 これで弁護士費用の一般的な説明は終わるのですが、少し付け加えます。私の場合、実はこのような弁護士費用の計算方法とやや異なる決め方をしています。

貸したお金が1000万円なら、返還を求めるお金は1000万円です。数字がはっきりしています。しかし交通事故の補償請求の場合、請求額1000万円とはじき出しても、その数字にどれだけ確かな根拠があるのかという問題が残ります。極論すれば2000万円を請求額にすれば、それだけで着手金は大幅に増えます。弁護士は1000万円が妥当だと考えても、被害者が2000万円を請求したいとこだわれば、着手金が増えてしまいます。また、加害者が保険に入っていなくて資産もなさそうな場合は、補償金確保の見通しが暗く、いくら高額の補償請求をしても現実性がないということもあります。請求金額と着手金が連動するだけに、着手金の決め方の合理性が大いに気になります。
私が採っている弁護士費用の決め方は、着手金と報酬金を合わせて獲得金額の15~20パーセント程度で決めておき(事案により比率に幅を持たせる場合と確定比率にする場合とがあります)、はじめにその一部にあたると考えられる金額を着手金としていただき、残りは補償金額を獲得した段階で報酬金としていただく、そして調整を要する問題が出れば誠実に協議するという条項を設けるという方法です。

上記の事件で言えば、着手金+報酬金は、700万円の15~20パーセント程度、つまり105~140万円程度になるのですが、「700万円」という金額は当初はわかっておらず最後に判明する数字ですので、とりあえず事件の規模などを参考にして、控えめの金額(例えば「50万円」などと)を着手金としていただき、別に実費分をお預かりし、補償金を獲得した段階で、700万円×(0.15~0.2)-50万円=55万円~90万円を報酬金としていただくという形にするのです。

「着手金と報酬金の合計額を獲得補償金額の一定比率と決める」という私のやり方にも意見・異論があるかも知れません。が、ともあれ結論としては、弁護士費用や諸経費の合計額は獲得補償金額のおおよそ20パーセント前後になると想定し、そのことを念頭において保険会社の提示金額と弁護士が推定する獲得補償金額の見込み額との差を検討し、係争の得失を考えればよいということになります。

そして、率直に言えば、「保険会社の提示金額」と「獲得補償金額見込み額」を厳密・詳細にチェックするまでもなく、大半のケースは後者が前者を大幅に超え、時には完全に圧倒する水準になります。

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