5 弁護士関与相場の登場
支払いの仕組み
保険会社の支払い構造と訴訟手続きと弁護士の登場が絡み合って、補償金の支払いの世界には、保険会社相場と裁判所相場の2種類以外に複雑なバリエーションが生まれます。簡単に整理すると次のようになります。
① 保険会社相場=被害者本人と保険会社の間で結論を出す場合
② 保険会社相場=弁護士が交渉して妥結する場合(支払い水準は①+α)
③ 裁判所相場=弁護士が訴訟を起こして和解で終わる場合(支払い水準は④-α)
④ 裁判所相場=弁護士が訴訟を起こして判決まで進む場合
簡単に言えば、保険会社相場と裁判所相場の間に、②と③という「弁護士関与相場」が登場することになります。弁護士が関与することで少なくとも①より支払い水準が上がり、④まで行けばもちろんですが、そこまで行かなくても支払い額は大きく増額します。もう少し踏み込んで言えば、①と②の差が極めて大きく、事件の内容と弁護士の努力によっては、②でも③の水準に接近することがあります。
この中間相場は、現実の補償額を保険会社相場から裁判所相場に近づける努力の一環と見ることもできますし、多くの被害者に裁判を起こされ判決で裁判所相場の支払いに到達してしまうのを阻止する保険会社側の防衛戦の一環とも見ることもできます。トリプルスタンダードをシングルスタンダードへの一里塚にするのか、ダブルスタンダード死守の防波堤にさせるのか。両者のせめぎ合いの局面なのですが、現状はまだまだ弁護士関与が少なすぎて、話になりません。
なお、一言付け加えます。この説明はあくまで一般的な傾向です。実際には、このような結論にならない場合もあります。私自身、裁判所から不当に低額の判決を言い渡され、衝撃を受けたことがあります。控訴審である程度挽回しましたが、私自身の予測が大きく外れました。この説明を極端に固定的に理解されないよう、注意しながら読んで下さい。
ともあれ、弁護士を利用すると獲得金額が増えること、それもかなり増える場合があるようだということは、おわかりいただけたと思います。次の問題は、仮にそうだとしても被害者が獲得した結論は被害者にとってメリットになるのかです。端的に言えば、その増額分の多くが弁護士に持っていかれないか、争うことで支出を余儀なくされるお金がよほど多いのではないか、ということです。
保険会社が被害者に150万円を支払うと言っている時に、弁護士を立てて300万円を獲得しても、弁護士に支払うお金やその他諸々の支出が150万円以上になるとすれば、保険会社が提示したお金を受け取って終わりにしていた方が、苦労もなくてよかったということになるでしょう。
その判断は、被害者が弁護士に支払うお金などの支出がどのくらいになるかによって決まります。そこで弁護士に頼むとかかるお金のことにお話しを進めます。
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