6.被害者と向き合う
被害者の状況に思いを、そして真実を
相手に被害を与えたあなたと、被害を受けた相手方との関係ほど難しいものはありません。「足を踏まれた者は痛いが、踏んだ者は痛くない」と言います。被害者には被害者でなければわからない苦しみがあります。さだまさしさんの「つぐない」の歌に出てくるような加害者は、実際にはやっぱり少ないものです。残念なことです。
被害者は肉体的に傷ついているだけでなく、精神的に深く傷ついています。加害者が償いを積み重ねても、被害者から本当の許しは得られないもの、得にくいものと思った方がよいでしょう。あなたにも言い分があるかも知れませんが(たいていあるものです。)、そのことを言い募れば、話は確実に混乱します。
強いて行動原則を言えば、「あなたにできることはすべてやり切る。その上で言いたいことを言う」ということです。相手方に真摯な姿勢をとっていればこそ、事故について真実を言えるのです。「やるべきはやった、だから臆せず真実を語れる」という関係です。
誠実な謝罪の姿勢を前提に
謝ると責任が重くなるとか、頭を下げると相手は強くなるとか、よくそのようなことを言う人がよくいます。そういう例もまったくないとは言いませんが、責任の有無や程度は、事案を丁寧に分析して判定してゆくもので、あなたの言葉や態度で結論が決まるものではありません。被害者との紛糾は、事故そのものに起因することももちろんありますが、見舞いに来ないとか、許せない言葉を発したなどという、事故後の加害者の言動に起因することが非常に多いことを知って下さい。
とりわけそのことは取り返しのつかない死亡事故の場合について言えます。「死」は文字どおり取り返しようのない被害です。ほかの被害とは質が違います。ご遺族に対する加害者側のちょっとした態度が(加害者側としては非難されるようなこととは思えないのに)被害者を深く傷つけ、まとまりかけていた示談をぶち壊してしまった例を私は少なからず見ています。
また、加害者側としては、代理人の保険会社が被害者に適切に対応してほしいと思っているのに、保険会社が渋い態度や失礼な態度をとった結果、被害者の加害者に対する非難感情が増幅してしまうことがあります。保険会社の杜撰な対応が、加害者を激しい非難の矢面に立たせてしまう状況を、私はこれまでたくさん見てきました。加害者の努力目標の一つに、保険会社が被害者にきちんと対応するようにさせることがあります。
<「5.検察の調査」へ戻る | 「7.よい弁護士を探す」へ進む>
法律相談・お問合せ
- TEL:03-5275-1180 月曜日~金曜日 9時45分~17時00分まで(12~13時除く)
- メールでのお問合せ・法律相談