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1.「責任をとらせる」とは

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1.「責任をとらせる」とは

相手の不注意が原因で自分が被害を被ったら、その結果について責任をとってもらうのは当然のことです。しかし、今のあなたは、それより自分の身体をどうしてくれるのかとか、これからどうなってしまうのかということで頭がいっぱいかも知れません。事件の真相を明らかにさせることがすべてだと思っておられる方も少なくないと思います。

多くの交通事故被害者は、責任の追及を考える以前に、苦闘の経過があります。言葉に尽くせない苦痛であることも少なくありません。私は、交通事故事件に関わる中でいつもそのことを感じてきました。「理屈の解説」がともすれば空疎であることをわきまえつつ、責任に関する法律の説明をします。

法は、責任を追及するという形で事件を取り扱います。それを言いかえれば、責任が追及できればそれ以上の究明はしないということでもあります。きちんと責任を追及してくれればそれでもいいのですが、「これで責任追及は終わり、後はなし」と言われると、被害者としては納得できないことが少なくありません。どうしたら悲惨な事故を根絶できるのか。根絶できない責任は誰にあるのか。そのことも忘れてはならないと思います。

「不注意」も「責任」もよく使われる割には、素人にはわかりにくい言葉です。詳しいことは弁護士などに任せ、ここでは加害者がとらねばならない「責任」の中身を簡単に素描します(以下、傷害事故の被害者も死亡事故のご遺族も、すべて「被害者」と表現します。)。

加害者の民事責任

交通事故の賠償責任を負う加害者は、多くの場合、車の運転者(ドライバーやライダー)や車の持ち主などです。この責任を民事責任と言います。賠償に備えて車の持ち主はたいてい保険に入っています。法律上強制されている自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入するほか、多くの人は任意保険や共済制度などにも入っています。任意保険に入っていれば、加入保険会社の社員が加害者や加害車両保有者の代理人としてあなたの前に現れます。裁判になれば保険会社の弁護士が登場してきます。

賠償義務を果たすのは加害者や加害車の持ち主ですが、実際にその役目を果たすのは保険会社です。目の前に加害者が現れないことに憤慨する被害者がいますが、それが交通事故賠償請求事件の特徴です。

加害者の刑事責任と行政責任

相手が追及される責任など知りたくもないという方がいます。お気持ちはわかりますが、知っておいた方がよいこともあります。

その一つは「刑事責任」です。加害者は、被害を与えたことについて刑事責任を問われることがあります。「刑事責任」とは、犯罪を犯したことについて国から問われ、国に対して果たす責任です。人身事故なら多く「自動車運転過失致死傷罪」が成立し、物損事故なら多く「安全運転義務違反」などの道路交通法違反事件が成立します。事故の責任のほかに救護義務違反や報告義務違反などに問われることもあり、運転時の状況によっては危険運転致死傷罪という重大な刑事犯罪が成立することもあります。

捜査の結果、責任がないとか軽いとかと判定されると不起訴になることがあり、起訴されて懲役・禁固・罰金などの刑が言い渡されることもあります。刑事責任を問われると前科になります。

もう一つの責任は運転免許に関する「行政責任」です。事故状況や前歴などにより、加害者には運転免許の効力の一時停止や運転免許の取り消しの処分が行われます。これを行政処分と言います。停止の場合は一定の期間が経つと免許が復活しますが、取り消しの場合は復活しません。「行政処分」は、一時的か長期的かの差はあれ加害者を車の運転の世界から排除・追放する仕組みです。

この責任は、道路交通法違反だけでも問われます。事故の場合はたいてい一回で処分の対象になり、それも多くは重い行政処分を受けます。

「刑事責任」も「行政責任」も、被害者やそのご遺族などの状況や意見を踏まえて決めることがあります。被害者やご遺族にきちんと対応してこなかった加害者が急に態度を改めたりする時には、謝っておかないと責任が重くなると捜査官に言われていることがよくあります。

被害者としての対処

刑事責任を問うのは検察、民事責任を問うのは被害者、行政責任を問うのは公安委員会です。責任を問う部署(役所)や人がそれぞれ違い、問われる責任の内容も違います。「罰金を払ったうえ免許が取り消される」ことも、「賠償金を払ったのに処罰される」ことも珍しくありません。

「生兵法(なまびょうほう)は怪我のもと」と昔の人は言いました。被害を被った事件に関する責任を一言で言えば、「とるべき責任はとらせる」ということです。

事件について警察がどのように捜査を進めるかは私の知ったことではないと決めている人もいます。多くの被害者は、警察・検察・裁判所により刑事責任が問われることも、警察捜査を踏まえて行政責任が追及されることも知らないままでいます。

警察には事故の捜査をきちんとしてほしいと要請するのが基本です。言わなければ、警察は責任追及の手をゆるめないとも限りません。ただし、加害者の責任は、慎重に分析しなければ結論が出ないものです。被害者にすれば、「答えはハッキリしている。なにをごちゃごちゃ言っているのだ。」という気持ちかも知れません。しかし、犯罪の認定は、ひとつ間違えば重大な人権侵害になります。批判に耐える捜査をしなければならないという宿命があります。そういう慎重さからくるものなのか、許されない手抜きなのか。見極めは簡単ではありませんが、被害者の思いを余さずぶつけたときの応答で考えましょう。
弁護士への相談をできるだけこの段階から弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。「弁護士に相談したらまだ早いと言われた」などと聞くことがあります。本当に「早すぎた」のか疑問に思う(弁護士としてアドバイスすることは結構あったのではないかと思う)こともありますが、本当にまだ早い状況だったとしても、その言葉だけでも気持ちが少し落ち着くはずです。「わからない」ということは人生最大の不安ですから。弁護士に相談もしないで、相手とごちゃごちゃと理屈に合わない交渉をして、事件を「変にいじってしまった」ために、後々弁護士が無用の苦労をするケースがあります。早期相談にしくはないのです。

最後に、老婆心ながら申し上げますが、被害者として何をおいても集中すべきは治療です。気になることはたくさんあるでしょうが、とりあえずは治療優先でいきましょう。意識をあちこち分散させると、治療の効果もなかなか上がりません。責任を問う準備も、治療専念と矛盾しないように考えながら進めることが大切です。

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