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「倒す思想をうちかためよう」

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倒す思想をうちかためよう 【裁判員制度】

裁判員制度をめぐる情勢と反対運動は新しい高みを迎えている。消極80%超。宣伝広告に国費をいかにつぎ込んでも、制度は依然として多くの国民から背を向けられている。開始1年2か月の今年7月末までの起訴事件のうち判決が言い渡せたのは半分以下の43%だけ。事件処理の滞留状況は目を覆うばかりだ。「司法改革」の目玉であった弁護士激増政策も立ち往生、法科大学院政策もとうとう破局、そして裁判員制度も破綻なのである。

日弁連は虚ろな宣伝に走る

今、司法の現場に推進派が展開する情景は、その修羅場を何とか取り繕おうとする必死のもくろみと、その見え透いた偽装がかえってあからさまにする破綻の実相だ。
日弁連が紹介する各地の裁判員事件弁護の取り組み(「裁判員本部ニュース」8月1日号)を見よ。殺人等の起訴事件で傷害致死の判決を出させた…。強盗致傷を窃盗に縮小認定させるなどした…。しかし、裁判員裁判ゆえにこの結果が出た(裁判官裁判だったらこの結論にはならなかった)という論証の姿勢はどこにもない。何の具体的根拠もなく「裁判員制度が刑事裁判を変えるという実感を強く抱かせた」などと論結するのは、まやかしを通り越して「無理を承知の滑稽感動譚」に類すると言うほかない。

自然科学者からも異論が出て

日本機械学会の法工学専門会議企画セッションで、交通事故態様の画像解析報告が行われ(9月7日)、ある県警の科捜研技官は、裁判員にわかりやすいこれからの科学的立証方法としてCG画像解析の有用性を強調した。しかし、会場からは、その分析の科学性・合理性への疑問が続出し、また、「わかりやすさゆえの危険性」に対する警戒の発言が相次いだ。捜査官の単なる言い分(主張)が、争う余地のない真理であるかのように見えてしまうことに対する違和感は今や自然科学者の間にもさざ波を広げている。
裁判員裁判における検察立証の非科学は、危険運転致死罪などにとどまらず各種の事件の科学立証場面で指摘されているが、とうとう「市民の理解の容易さ」への批判が専門家の領域からも発せられる時期に至ったのだ。

草の根翼賛運動のいばら道

8月、裁判員経験者と制度支持市民団体と制度推進弁護士が主催者となって「裁判員の貴重な体験を市民全体で共有する」組織『裁判員経験者ネットワーク』を立ち上げた。マスコミがにぎにぎしく紹介したのでご存じの向きも多かろう。「守られたグループで話し合う(←どういう意味だ!)」「経験を一般市民に分かち合う」「制度をよりよくする」…。
戦争政策翼賛の「草の根運動」が組織され、弁護士も挺身奉公に走った時代がある。親や祖父母たちを巻き込んだ「出征兵士を頌える」運動が今私たちの眼前で展開されている。
だが、見落としてはならないことは、今度はこのもくろみがまともに進展していないことだ。9月20日に東京で開催された交流会に参加した経験者の数は僅か7人。ネットワークに登録した総人数はたった13人。4000人近い裁判員経験者のほとんどから蹴っ飛ばされたのである。「裁判員の貴重な体験を市民全体で共有する」といくら言ったところで、制度への共感が根底的に存在しない状況下で、翼賛運動がたどり着く帰結は当然すぎるほど当然の結果である。

反裁判員運動の新たな高み

裁判官のまねごとをさせて、この国の治安を守りこの国を支えるのは自分だと1人ひとりの国民に思い込ませるところに裁判員制度の狙いがある。国民の圧倒的多数から拒絶されようとも、どんなに事件処理が滞ろうと、どれほど現場の法曹から冷たい視線を向けられようとも、この国の政府が裁判員制度を手放そうとしないのは、直面する「国の危機」を乗り切る方策として国民の思想改造が必須不可欠の目標になっているからだ。
反裁判員運動は確実に新たな高みを迎えた。私たち今求められていることは、反対の心を拒否の姿勢に深化・激化させること。そして、多くの人々がよろめきながら終焉に向かっていったナチスドイツの歴史を私たちは絶対に繰り返さないという決意を自身の胸中にしっかりと置くことである。

(裁判員制度はいらない!全国情報第12号)

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