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戦時司法を許さない闘いに立ち上がろう

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戦時司法を許さない闘いに立ち上がろう 【司法支援センター】

構造的な経済危機を背景に、アメリカ政府は暫定政府体制を通じてイラク支配をさらに深刻な形に推し進めた。石油強奪戦争の第2段階への展開である。他方、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に世界各国でかつてない勢いで戦争反対の声が広がっている。そしてイラクからはスペインに続いてフィリピンが撤兵。盟友脱藩の勢いは、さらに広がろう。

これも構造的な経済破たんにあえぐ日本政府は、イラク派兵から多国籍軍への参加決定と歩を進め、マスコミからも「小泉戦時体制」と評されるに至った。首相の人となりに問題を矯小化させてはならないが、「戦時体制」に「小泉」の名を冠して確かに違和感がない。9条改憲の時代の到来である。柳条湖事件(1931年)の再来だとか、関東軍を彷彿(ほうふつ)とさせるだとか、戦前のリプレイの恐怖などの声も聞こえる。

「戦前の再来」。それは単なる戦争の再来ではない。わが政府が他国侵略の大号命をかけることになるとはまるで思わず、結局2千万を超えるアジアの民衆の殺りくを許してしまったあの時代の再来ということだ。給水活動しかしない自衛隊は侵略戦争に加担していないと思い、そうであれば多国籍軍参加も侵略戦争加担ではないと思う現状容認の姿勢こそ、「不拡大方針」を疑わず歯止めなき戦争政策を許した戦前の再現なのだ。

憲法と人権の立場に立つことを自らの職業上の使命とする私たち弁護士は、文字通り原点に立って自身の行動原理を考えなければならない局面に置かれている。

■支援センター協力拒絶を

6年前の98年夏、参院選に惨敗し危機深まる中で自民党が提起した「治安と経済のための司法改革」方針は、99~01年の司法制度改革審議会のいわゆる司法審路線となって、その全容を現した。司法審の意見書を受けた小泉首相は、01年6月、「政治改革、行政改革、規制緩和等の経済諸改革の最後の要(かなめ)たる司法改革は正に国家戦略である」と強調した。

国鉄改革などを軸に労働運動の体制化を図り、政治改革と称し民意の反映を封殺する小選挙区制を導入して92パーセント翼賛国会を創出し、民衆の生活を圧迫する行政改革や規制緩和により生活破壊と大失業時代を到来させ、それら諸改革の最後の要として「資本の要請に応え国家の民衆管理と統制を推し進める」司法体制を作ろうというのである。

自民提言から6年目の今年1~6月の通常国会で、裁判員法・刑事訴訟法「改正」・国営弁護法の3悪法が年金・有事関連法案と同じくほとんど議論のないままに成立し、その直後に自民党は参院選でまたも敗北した。3悪法は、司法における国民総動員の裁判員制度、簡易・迅速・結局重罰の刑訴法改悪、弁護士と弁護士会の御用化を策する国営弁護からなる。民衆の信を確実に失いつつ(失えばこそ)、途方もない司法改悪路線を突き進むその狙いは、戦時即応の司法体制作りにある。

このときに弁護士がとるべき態度はただ一つ、いかなるあいまいさも残さない「司法改悪全面反対」の堅持とその実践である。

弁護士自身のとりわけ喫緊の課題は、国営弁護法(総合法律支援法)反対の闘いである。

黒川弘務大臣官房参事官は、昨年9月号の日弁連機関誌「自由と正義」に「制度を上から押しつけたととられないように留意したい」と書き、書かせた機関誌編集委員会の姿勢とともにひんしゅくを買った。情報提供の充実強化、民事法律扶助事業の整備発展、国選弁護人の選任体制確保、被害者等の授助体制の充実…。どれも支援センター新設の必要性をおよそ合理的に説明できるものではない。

主務官庁は法務省。資本金は全額政府出資。評価委員会の法務省内設置。理事長・監事は法務大臣の任命。法務省の強い監督権限。効率業務の論理。全弁護士に協力義務付け。これが弁護士の在り方の根底的変質を狙うものでなくて何か。国民が全国どこでも容易にサービスを受けられる体制の整備(小泉首相。03年3月6日司法制度改革推進本部)という宣伝は、実態や本質を途方もなく隠ぺいするものである。

あれこれの弁明にかかわらず、弁護士の自治が根底から破壊され、弁護士と弁護士会が国の管理と統制のもとで業務に従事し運営を進める体制に入る。

黒川参事官がいみじくも言う通り、司法支援センターの活動は各地の弁護士と弁護士会の協力なしには一歩も進まない。つまり、私たちが総力を挙げて反撃を展開すると、この構想は崩壊するのである。改憲阻止の闘いと結び付け、さまざまの知恵と工夫をもって団結し、弁護士の実力の闘いを巻き起こし、司法支援センターヘの協力を拒絶する闘いを全国的に展開しよう。

■分かれ道に立つ法律家

戦時教育体制作りとしての教育基本法改悪。この間経済同友会や日本経団連が秋来たりと相次ぎ訴え、自民党が来秋発表するという9条改憲構想。私たち弁護士にとって、この闘いはかつてない壮大なものになる。戦争への道を容認し、結局は推進する法律家としてこの時代を生きるのか、再び戦争への道を進むことを許さず、改憲を阻止する法律家として生きるのかの分かれ道と言ってよい。

全国の友入たちよ。後悔のない闘いを闘い抜こうではないか。

(週刊法律新聞「論壇」 2004年7月23日)

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