【安保法制国会】時代は彼らにとって危機なのだ
2015.7.4 日本民主法律家協会定期総会誌上発言
「穏やかなノーベル賞作家の発したる『安倍が』『安倍は』の声の激しさ」(朝日歌壇)。時代は正に戦後史の大転換点にある。
安全保障法制法案のコアにあるのは、集団的自衛権行使容認の閣議決定(昨年7月1日)の国会承認。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」時(=存立危機事態)には、他に取り得る方法がなければ必要最小限度の範囲で武力を行使することが現憲法下でも可能になると安倍は言う。それが集団的自衛権行使容認の「新3要件」。
安倍は、国会で、ホルムズ海峡の機雷封鎖でライフラインが途切れるなどして国民の生死に深刻重大な影響が出る時を「武力行使の許される場合」にあげ、機雷除去のための海外派兵は外国領域内でも認められると答弁した。また北朝鮮を念頭におき、「攻撃国が我が国を射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有し、我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている」時には集団的自衛権を行使できるとした。これでいつでも戦端が開けることになった。
安保法制法案は、北朝鮮や中国や中東を睨んだ侵略戦争をタイムテーブルに載せ、その障害になる憲法9条を破壊するクーデタ的暴挙。「新3要件」に歯止めをかけるとか拡大解釈を許すななどという議論があるが、「新3要件」なるものを掲げた7・1閣議決定自体が問題なのだ。議論するところを間違えてはならない。
「米国の戦争に巻き込まれることはあり得ない。日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだ」(安倍)。これが、他国の戦争に巻き込まれるのには反対だと主張してきた人たちに対する回答である。今回の日米新ガイドラインは米国の要請ではなく、日本の申し入れにより改定された。安倍は「進んで武力を行使する」と言っている。戦後レジームの脱却とはそういうことである。
集団的自衛権の行使容認に反対する理由として「個別的自衛権で対処できる」と言う人たちがいる。尖閣がやられたら自分も立ち上がると言った「リベラル」なジャーナリストもいた。しかし、個別的自衛権なら武力行使が許されるのではない。「自衛権」も「自衛戦争」も、侵略戦争を正当化する戦争勢力が創案した完璧な騙し言葉。すべての侵略戦争は自己の生存と平和実現を標榜して行われる。「満蒙は我が国の生命線」と言った松岡洋右にならえば、尖閣諸島もペルシャ湾ホルムズ海峡も我が国の生命線になり、「東洋平和のためならばなんの命が惜しかろう」の世界になる。
戦争政策に突き進む政府がまず叩くのは闘う労働者と専門家集団である。労働者から戦闘力を奪い専門家を侵略国策に引きつけた戦前の歴史を現代に置き換えてみよう。産業報国会と変わらない連合、新自由主義司法改悪に迎合翼賛する弁護士、多くの研究者集団の翼賛化に向けた地層変動、これらの動きの本質を暴露・批判できる腹のすわった左翼政党の不存在。だが、闘う労働組合・専門家の動きは着実に生まれ育っている。
改憲勢力は実は自身が脆弱なのであり、暴挙もそのゆえなのである。彼我の力関係の真実は彼らにとってこそ危機なのだ。戦争反対の闘いはそこをしっかり踏まえて進めなければならない。
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