交通事故時の補償解決実績、および著書、講演実績多数 交通事故の弁護士と言えば高山法律事務所

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「司法試験改革の方向に疑問」 的外れの検事対策と弁護士改革

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「司法試験改革の方向に疑問」的外れの検事対策と弁護士改革【司法試験改革】

司法試験の改革をめぐる論議が活発になってきたが、私はいま改革を推進しようとしている法務省の考え方に疑問を感じないではいられない。

法務省は、若年層に司法試験離れの傾向が出ており、合格者は高年齢化していると強調する。だが、法務省の公表資料によってもそうはいえないのだ。出願者の年齢構成の推移から若年層に司法試験離れの傾向は見いだせないし、この10年来合格者の平均年齢は例年大体28歳ないしそれを少し下まわるあたりにある。その28歳というのも高齢合格者を加えた単純平均で、実勢はもっと若年に集中している。最頻年齢はこの15年間ほどほとんど変わらず26歳前後である。「合格者が異常に高齢化している」(法務省)というのは明らかに事実に反する。

しかし、法務省は「豊かな正義感を有する者は若き法学生である」とか「化石化した頭の人間ばかりでは法曹界はのたれ死にする」などと、最大級の過激な表現を用いて若年者が多く合格する試験制度への改革を叫ぶ。私には司法試験をめぐる実情と法務省の主張の乖離(かいり)の方がよほど「異常」に思われる。法務省は何を狙い、本当は何が問題なのか。

第1は、検事志望者減少対策である。必死の勧誘にもかかわらず昨年四月には司法試験制度始まって以来最低の34人(修習終了者の8%)しか新任検事を確保できず、その月司法研修所に入った司法修習生のうち検事志望者はわずか9人(入所者の2%)しかいなかった。問題は若年層の「司法試験離れ」ではなく、明らかに司法試験合格者や司法修習生の「検事離れ」なのである。

その解決は、司法試験の受験に年齢や回数の制限を加えたりして若年者を確保すれば果たされるようなものではない。ほとんどの司法試験合格者、多くの司法修習生が検事を志望せず、検事になってもその多くが中途退官してしまうのはなぜか。その原因を真剣に考えなければならない。一時しのぎの対策は問題を解決せず、ただ矛盾をおおい隠すだけである。

第2は、法務省が弁護士の変容を企図していると思われることだ。法務省は「改革は検事確保を目的とするものでは断じてない」とし、「社会の高度化・国際化に対し法曹の対応が不十分で、諸外国にくらべて法曹の数が少ない」ことが改革の最大の理由だと強調する。そしてその説明を聞くと、そこでいう「法曹」とは実は裁判官や検察官ではなく弁護士を指していることがわかる。

社会は変化しているし、弁護士が少ないというのはそのとおりだ。しかし私には、法曹や司法のあり方に対する国民の批判や要求の第1が、若い法律家の方がよいとか、企業の法務や国際的な交渉に弁護士がもっと役割を果たせとか、ただ弁護士の人口をふやせばよいというようなことだとは到底思えない。

検察庁は冤罪(えんざい)の責任をどう考えているか、巨悪を眠らせてはいないか、裁判所はすみやかな権利回復の場になっているか、人権を軽んじたり行政に追随したりしてはいないかなど、検察庁や裁判所が自らに託された責任をまっとうしているかどうかというところにこそ多くの国民の疑問や批判がある。弁護士が問われていることといえば、国民にとって正義と人権の身近な守り手になりえているかということの方がはるかに重要であろう。

今回の法務省構想は、自らの内なる病弊から目をそらすばかりか、「社会正義の実現と基本的人権の擁護」という弁護士法一条の精神を踏みにじりかねない弁護士改革に手をつけるものである。

(朝日新聞「論壇」 1987年11月4日)

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