交通事故時の補償解決実績、および著書、講演実績多数 交通事故の弁護士と言えば高山法律事務所

聴取に向けて準備する

交通事故の弁護士と言えば高山法律事務所 TOPページ > 交通行政処分 > 聴取に向けて準備する

聴取に向けて準備する

 意見聴取の一般的な説明は以上のとおりです。30日と60日の免許の効力の停止処分の場合には、意見聴取は法律上義務づけられておらず、呼び出しに応じて出て行くと直ちに処分が伝えられます。90日以上の停止と取り消しの対象の場合には意見聴取が義務づけられ、公安委員会はその手続きを経ずに処分することができません。

 出頭を求める連絡が何度きても無視していると、公安委員会は正当な理由のない不出頭と見て一方的に処分を下せます(道交法104条4項)。処分が遅れると期間計算の始期が遅れるなどドライバーに不利になることもあります。出頭を遅らせるのはあなたの自由ですが、そのあたりの覚悟が必要です。
さぁ、意見聴取に向けた準備。これからやることに話を進めます。

【違反や前歴の実情を正確に把握する】

 自動車安全運転センターから「運転記録証明書」を取り寄せます。運転記録証明書には、あなたがいつといつ道交法違反を犯し、それぞれ何点が付き、現在の累積点数が何点で、前歴はいつといつかなど、公安委員会が把握している点数や前歴の情報が記録されています。現場で違反を争ってサインや切符の受け取りを拒否していても、点数は原簿に記録されているのが普通です。

 証明書の交付申請用紙(郵便振替用紙が添付されている)は警察署や派出所に備えつけてあります。申請書の所定欄に必要事項を書いて手数料700円(2009年6月現在)を添えて郵便局で申し込むと2週間ぐらいで送られてきます。これによく目を通し、聴取時の意見を間違えないように注意します。おぼろげな記憶をもとに不正確な説明をすると、誤りを指摘されることもあり、あなたの説明全体の信用が傷つくことにもなります。細かいところにも気配りをしましょう。

 なお、意見聴取の呼び出し状が来てから運転記録証明書を取り寄せたのでは、多くの場合、期日に間に合いません。そろそろ危ないかなと思ったり、事故を起こしてしまったりしたときには、躊躇せず取り寄せるという早手回しの対応も必要です。

【違反や事故の実情を調べ、書面にまとめる】

 違反や事故の実情を正しく評価してほしい事案については、その実情が結論を導く鍵になります。多くの違反は車両走行中の現象です。どんな場所のどういう走行が違反とされたのか、その判断の不合理を言うためには、現場の実情などをリアルに伝えなければなりません。調査結果はできる限り写真や図面にまとめます。この調査も呼び出しがかかる前に済ませておきたいものです。

 呼び出し期日までにどうしても調査が終わらない時は、聴取期日の延期を要請します。多くの公安委員会は、処分の軽重別に呼び出し曜日を決めているため、延期を要請すると1週間先の同じ曜日を指定してきます。1週間では足りないなら2週間の延期を求めるしかありません。公安委員会は、ドライバーに出頭してほしいと思っていますから、その程度の要望は多く受け入れます。

 聴取当日に先立ち、自分の言い分をできるだけ書面にまとめます。書面の表題は「意見書」とか「陳述書」などとします。日付と署名、捺印を忘れないこと。集めた写真や図面はその書面に添付します。この書面は、事前に公安委員会に送付します(何月何日に呼び出し番号何番で呼び出されている誰々だと名乗る)。

【公安委員は提出された関連資料に目を通す】

 公安委員会は、あなたの主張や証拠に目を通します。「公安委員が資料を直接検討しない意見聴取(聴聞)は違法」と指摘した判例を紹介しましょう。
「公安委員は事前に事案を把握していることを要し、そのためには、公安委員自ら資料を直接検討しておくことが理想である。…聴聞を主宰した公安委員において事案に対する十分な理解を欠くまま聴聞が実施されるときは、その聴聞は、法の期待する聴聞たる実質を有しないといってよいから違法であることを免れない」(浦和地裁1974年12月11日判決)

言うべき意見の柱は

 あなたの主張の柱はだいたい次のようなものになるはずです。これらのうちの複数の項目を訴えたいということもあるでしょうし、ここに書かなかったことでどうしても言いたいということもあるでしょう。創意工夫が大事です。

1. 違反の内容や当時の交通状況を考えると道路交通上の危険や障害を発生させていないこと(あるいは、ほとんど発生させていないこと)。

2. 違反の原因が道路の設備や構造の不備など、ドライバー以外のものにあること(あるいは、それらのものにも原因があること)。

3. 違反は事実だが、その背景に急病人の輸送や劣悪な輸送条件や労働条件など、特別な背景事情があること(あるいは、それらの背景事情にも原因があること)。

4. 事故の原因が被害者側の過失や道路設備、構造の不備、不合理な規制などにあること(あるいは、それらの事情にも原因があること)。

5. 累積点数の過去のケースにも1.~4.の評価をすべきものがあること。

6. 点数区分のあり方に起因する不合理など、ドライバーの責任とは言えない(あるいは、言い切れない)事情で、苛酷な結論になっていること。

7. 基準どおりの処分を受けると、職場の同僚の仕事や家族の生活などに不利益が極端に広がり、ドライバーの周囲の人々までが違反の責任を問われるような苛酷な負担になってしまうこと。

8. ドライバーとして、違反を犯したり事故になったりしないように日ごろから安全運転を心がけていること。また、車両を利用したボランティア活動など有意義な社会的活動を行っていること。

 私の経験を言えば、1.や2.の主張に対する公安委員会の抵抗はかなり強いものがあります。あなたの指摘は警察の交通取締りに対する批判になる場合が多いからです。書く以上は、腹を据えて書かねばなりません。

 3.や4.については、その事情をどれだけリアルに証明できるかが鍵で、具体的なデータを明らかにする必要があります。「自分はそう思う」と言うだけではダメです。

 5.は重要なポイントです。意見の聴取は、今回の違反(処分の対象になった最後のケース)について意見を聴く機会ということになっていますが、ドライバーとしては過去のケースの問題点に触れないまま累積点数だけで評価されるのは困る(それらの評価が変われば、まだ処分対象の水準に達していない可能性がある)と言う権利があります。この問題については、後にまたお話しします。

 6.は点数評価の区分の不合理です。一律に基準を適用することからくる矛盾と言ってもよいでしょう。公平にするための措置なので「それを言い出したらきりがない」と言われるかも知れませんが、当該ケースにはそのような一般論では済まない極端な不合理があると言うことになります。

 7.は公安委員としては比較的耳を傾け易い論点です。1.~6.は公安委員会として一応責任範囲のことになるけれども(従って、検討済みというリクツが登場しやすい)、職場の同僚の仕事や家族の生活などと言われると、「そりゃ知らなかったわ」と言いやすいのです(言われなければわからず、知らなくてもとがめられない)。どれだけ現実的な困難なのか、家族の通院証明書だとか、職場の皆さんの陳述書だとか、創意工夫の証拠提出を考えてください。

 8.は、「危険性が高い」と思われているドライバーに、このような安全実践者の側面があるという事情を示すものです。救命講習を受けているとか車は手放したとか(どちらも証明書が必要)、つまり一種の反対証拠を提示する行動です。書けることがあれば必ず書きます。私が補佐人をつとめたあるドライバーは、ボランティアでパソコンを修理し、さまざまな施設に車で運んで(「車で」がミソ)提供していると訴えていました。

法律相談・お問合せ

▲ページ上部に戻る