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8.あなたの過失は

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8.あなたの過失は

過失相殺に関する裁判所の考え方

不注意や落ち度を「過失」と言い、被害者側にも不注意や落ち度があったと考えて支払い賠償金額を減らすことを「過失相殺をする」と言います。発生した損害の分担を公平にしようという民法の考え方(722条2項)に基づいています。
どういう事情があると過失相殺がされるのでしょうか。交通社会でより強い立場の者(小型車より大型車、二輪車より四輪車、歩行者より車両)の過失を厳しく判定するとか、広路走行車や左方走行車を優先して判定するという道路交通上のルールが一般的に認められています。

「信号機が設置されていない横断歩道を歩行していた歩行者に直進してきた乗用車が衝突した場合」を考えます。基本的には歩行者には過失がないとされます。しかし、乗用車側からみて、歩行者の発見が特に困難な事情がある場合には、過失相殺が行われることがあります。例えば、夜間の事故だったり、乗用車が横断歩道に接近してから歩行者が横断を開始したような場合です。「夜間」なら5%、「接近」なら5%、「夜間の接近」なら10%の過失というように判定します。「10%」というのは、総損害の10%分は被害者が自己負担せよということで、総損害が1000万円の事故なら、被害者は100万円が損害金からカットされることになります。

また、逆に、加害者側の事情により、過失相殺減額を反対に引き戻す場合があります。例えば、事故発生地点が住宅地や商店街であったり、被害者が子どもや老人だったり、集団横断中だったり、乗用車側が速度違反をしていたような場合には、それぞれの事情により5%から10%の加算をすることがあります。事故は確かに乗用車側が主張するとおり夜間に発生したが、まだ商店街の店が開いていた時間帯だったので、乗用車としては人の横断を予想すべきだったので加害者には5%加算し、結局加害者は被害者の損害の95%を払うべきだというように考えるのです。

交通事故の被害に関する賠償は、被害者側・加害者側の諸事情を総合的に考慮して行わなければいけないとされています。過失相殺の理屈を現実の事故にあてはめる際の裁判所の基準は、多くのみなさんが想像されているよりは細かいことを頭に置いておく必要があります。

過失相殺の基準

交通事故の数は非常に多く、事故態様もそれこそいろいろです。さまざまな態様の事故の類型を考え、このような事故なら過失相殺の基準はこうしようという論議が法律専門家によって長く行われてきています。

多くの実務家は、「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(毎年改版。通称「赤い本」)や「交通事故損害額算定基準-実務運用と解説」(隔年改版。通称「青本」)などの執務資料を日常業務の中で使っています。例えば、「赤い本」の2012年版では、一般道路で227例、高速道路で20例の事故パターンを想定し、それぞれのケースの基本過失と過失割合を具体的に示しています。しかし、これらのデータブックも現実に発生する交通事故の全修正要素を含む全態様を説明し切るものではありません。類似例を探し出し、後は自身の考えで推測するしかないのです。

事故と賠償額をめぐって気をつけること

過失相殺の問題に限らず、事故像の解明そのものに関わる大事なポイントを申し上げます。

その一つは、過失の有無・程度を決定するのは何と言っても具体的な事故の態様だということです。いったいどんな事故だったのか。横断歩道を歩行中だったと言っても、歩道のどの位置をどの程度の早さで移動していたのかによって過失の程度は違ってきます。加害者の責任を小さくする事情が明らかなこともあり、その判定には事故解析の専門家などの力を借りなければならない場合もあります。その場合にはその解析に要する費用も考えなければなりません。

多くの交通事故裁判に事故解析の専門家が登場している訳ではありませんが、私が関わる事件は比較的難しいものが多いせいか、専門家に解析を依頼するケースがやや多いように感じます。

また、過失割合ではなく損害の程度に関しますが、被害者の傷害の実情や障害の程度などについて専門医の判断を求めなければならない場合があります。その時にも鑑定費用がかかることがあります。交通事故事件には、理論武装と立証に費用を要することが時折あるということを念頭に置いた方がよいでしょう。

もう一つは、過失相殺は、事故で被ったあなたの損害のすべてにかぶさってくるということです。入院費や治療費や診断書代も過失相殺の対象になります。慰謝料も対象とされるのが普通です。保険会社からすでに払われている治療費についても、過失相殺がされる場合には、後に払われるその他の損害賠償金からその分がさし引かれます。過失相殺が大きいケースでは残支払い金額が僅かになってしまうことがあり、極端なケースでは自賠責保険で支払われたお金のほかにはもう支払い額がないという場合もあり得ます。例えば、総損害が1000万円で、過失が5割、既払い金が400万円なら、残支払い金は100万円になります。

保険会社は、全体に被害者の過失を少しでも大きく評価したいと考えます。10%の過失は総損害の10%減額に直結しますので、厳しい論争になることが少なくないのです(先に示した事例中にも出てきています。)。双方の過失をめぐりシビアな論争が展開されるケースがあること、そして中には現実の支払い金が僅かになってしまうことがあることも頭に置く必要があります。

これらの点については、弁護士に相談する際にはかならず尋ねておく必要があります。

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