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7.損害の保険会社相場

 

本音は「払いたくない」
 先にも述べたように、その事故でいくらの賠償金が払われるべきかということは、加害者も被害者もよくわからないのが普通です。被害者は(そしておそらく加害者も)保険会社に誠意をもって払ってほしいと望んでいるだけでしょう。
 ざっくばらんに言えば、保険会社はできるだけ支払い金額を少なくしたいと考えています。加害者が無制限の保険に入っているからといって安心はできません。「限度額無制限の保険」というのは、被害者が求める金額はいくらでも払うという意味ではなく、その事故の実情や支払いに関する保険会社の理解と基準に適合している限りでいくらでも払うというだけのことです。その「理解と基準」に適合しなければ、保険会社は「請求」をばっさり切り捨てます。それも「請求」があった時のこと。多くの保険事故では、被害者は自分から金額を提示して請求したりしません(請求金額の算出方法がわからないので額を示さないままでいる。)。保険会社が提示した金額をそのままいただいて終わるだけです。

 その保険会社の「理解と基準」には本当に合理的な根拠があるのか。保険会社は勝手な計算をしていないか。支払い額を必要以上に削り込む保険会社の対応には重大な問題があると私は考えています。


賠償金支払いの実例で考える

 被害者が弁護士に相談し、弁護士が保険会社と交渉に入り、とりわけ訴訟を起こした場合に到達した結論を調べれば、どこの保険会社の査定も全体にひどいものであることがわかります。私の経験からいくつかのサンプルをご紹介します。まったくランダムに選んだごく普通の事例ばかりです(関係者がいる話ですので、少し事実を変えて説明しているところがありますが、金額や症状など結論に関わる部分は実際のとおりです。支払い保険会社はいろいろです。)。

 例えば、乗用車に足を轢かれたバイクライダーの建築士さんの事件。事故時25歳。バイクを運転して小さな交差点を右折しようとし、信号が青に変わり発進した直後に、自身の右後方から発進した乗用車の左前輪に右足を轢かれた。14級の後遺障害(局部に神経症状を残す)。保険会社は被害者の過失を50%とし、治療費などの既払い額が137万円あるので残支払い金は45万円だというのが保険会社の主張だった。納得できず提訴した結果、裁判所は保険会社が支払うべき残支払い金額は340万円だとした。逸失利益を43万円から218万円に、慰謝料を140万円から318万円に増やし、被害者の過失を40%に下げる勧告だった。(保険会社の金額提示から最終結論まで1年5か月)。

 例えば、トラックに衝突された歩行中の主婦の事件。事故当時35歳。交差点を右折進行してきたトラックに背後からぶつけられて、転倒し頭を打って12級の後遺障害(局部に頑固な神経症状と聴力障害)を残したケース。保険会社は賠償額を620万円と回答したが、被害者が訴訟を起こした結果、判決による支払い額は2800万円になった。裁判所が労働能力の喪失率を5%から14%に引き上げ、喪失期間を20年間から32年に引き上げ、認定した損害賠償額2100万円に事故から支払い時までの遅延損害金(利息)700万円を加算した結果である。「14%」も「32年」も至って常識的な判断で、被害者の過失こそ争われなかったが、不合理な保険会社の低額回答が裁判で打ち破られた典型例であった。(提示から結論まで1年8か月)。

 例えば、事故処理中に乗用車に突っ込まれた生花業者の事件。事故時47歳。交通事故の事後処理に当たっていた事故関係者が、突っ込んできた別の乗用車に撥ねられ、左下肢をひざ関節以上で失うなどの後遺障害を残し、その等級は併合3級だった。保険会社は、治療費を支払っており、自賠責保険金2200万円が払われていることから、支払い残金は3253万円と主張した。被害者は納得がいかず提訴。裁判所の和解勧告による結論は1億1500万円だった。裁判所は、保険会社が主張した被害者の過失(20%)を認めず、逸失利益を5900万円から1億44万円に増やし、後遺障害慰謝料を797万円から2000万円に増やしたほか、遅延損害金や被害者の弁護士費用支払いの負担も配慮し、諸損害にさらに2100万円を加算するよう保険会社に勧告した。(提示から結論まで2年8か月)


 もう一度言いますが、これらの実例は、被害者から見て特に良い結論が出たものを並べたのではありません。遺憾なことにこれが平均的な実情です。裁判の結果が保険会社の提示案といくらも変わらなかった例はまれだと言えます。

 保険会社は、等級の不当な低位評価、能力喪失期間の不当な短期評価、裁判所基準とかけ離れた会社基準慰謝料額の適用、被害者の過失(次項参照)の過大評価、遅延損害金(わかりやすく言えば利息)の不払い、などの要素を組み合わせ、掛け合わせて支払い額を少なくしようとします。被害者の無知をいいことに展開される保険会社の削りまくりの現実はまことにひどいものです。

 保険会社の払い渋りが新聞などで報じられることがありますが、私に言わせれば、長年にわたってどこの保険会社も堂々と(?)やっているこの不当削減こそ確信犯的な払い渋りです。「これはもはや犯罪ではないか」と言った被害者がいましたが、無理からぬ感想です。

どう考えても不合理だ
 私は、この事実を日本交通法学会のシンポジウムで問題にしたことがあります。10数年も前です。「裁判所の判断は世間一般に指し示した法の基準だ。保険会社が揃って裁判所の『指示』に従わない態度をとり続けている現実は到底承認できない。」というのが私の意見の骨子でした。交通裁判に関わる裁判官も保険会社の関係者も参加している場でしたが、これに対する保険会社側の弁護士の応答は、「裁判所相場が保険会社相場より高いのは、わざわざ訴訟を起こす被害者の努力に対するご褒美なのだ。」というものでした。

 私は納得できませんでした。今でも納得できません。圧倒的多数の被害者は保険会社が示した金額を黙って受け取っている(というよりも、受け取らされている)状況は明らかに異常です。ひたすら保険会社の言い分に従わせ、文句も言わせず支払い金を受け取らせて保険会社は法外な企業利益を上げる。このような手法は到底許されないと私は考えます。

訴訟をいとわない姿勢で
 しかしと言うかそれならと言うか、保険会社がそろってこの大削減方針を正さない間は、事故被害者としては、弁護士を代理人にして、交渉を追求するか訴訟を提起するしかないでしょう。ご覧のように、その結果多くのケースでは支払い賠償額が一気に跳ね上がるのですから、それをしないという手はありません。

 弁護士費用やその他の諸費用を併せても、裁判に必要な経費は賠償獲得金額の20〜10%くらい(賠償金額が上がると弁護士費用の比率は一般に下がる)です。それを引いても被害者の手取り額はほとんどの場合保険会社の提示金額をはるかに超えます。「明日の100円より今日の10円」というような事情があればともかく、そういう事情が特になければ、後は弁護士との打ち合わせなどの手間を覚悟したり、解決までしばらくの間の精神的な苦労を決意したりできるかどうかだけの問題になります。

 交通事故の被害者としては、加害者の責任をきちんと問いたいという思いが基本で、お金がすべてではない(1円でもお金をよけいにとりたいということだけ考えているのではない)ということかも知れません。それはよくわかりますが、それにしても(あるいは、そんな被害者の気持ちをよいことにして)こんな「とんでも相場」が世にまかり通る現実は許せないと思うのです

 

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